漢方のミカタ③

 今回は、西洋医学における診察や診断、治療方針の決定にあたる概念――漢方でいう「証」について触れていきたいと思います。

 このあたりの話になると、「もう嫌だな~」と感じる薬剤師や薬学生もいるかもしれません。また、薬局薬剤師は診断を行う立場ではないため、「そこまで詳しく知らなくてもよいのでは?」と思う気持ちも理解できます。

 しかし現在では、トレーシングレポートを通じて患者さんの情報を処方医へフィードバックしたり、提言を行う機会は確実に増えてきています。例えば、患者さんが漢方処方を希望していても医師に相談しづらい場合、薬剤師が情報提供を行う必要が出てくる場面もあるでしょう。その際、患者さんの訴えや体格などを踏まえた処方提案を行うことは、薬局薬剤師として重要な責務の一つです。もちろん最終的な処方権は医師にありますが、これからは薬剤師がより積極的に介入していく時代に入ったと言えるでしょう。そのためにも、「証」を理解することは大きな近道になります。

 それでは「証」について、触れていきたいと思います。   

 漢方医学における「証」とは、個人差を重視した診断プロセスです。証の決定は、処方される薬剤の効果を高め、副作用を避けることにも密接に関係しています。つまり、漢方処方は「証」に基づいて使用することが、有効性と安全性を確保するために重要なのです。

 もちろん、証診断を完全に習得することは一朝一夕にはできません。とはいえ、多くの薬学部の授業で「証」には触れているはずですので、ここで改めて知識を整理していきましょう。まず、漢方の根本的な考えのひとつに「心身一如」があります。これは、心と体を一体のものとしてとらえる考え方です。自覚症状も含めた身体全体をひとつのまとまりとして理解する視点と言えます。

 そして、この「心身一如」の考え方でとらえた全体像を、「陰陽論」「五行論」「六病位」「気血水理論」などによって分類し、「証」として整理したうえで治療を進めていきます。
 一方、一般的な西洋医学の診断では、臓器・細胞・タンパク質などへと対象を細分化し、検査によって異常部位を特定していきます。そのため、基本的には明確な異常が確認されない部位を病的とみなすことは少ないと言えるでしょう。

 薬剤師ならどこかで「漢方は人を診て治療を決める医学」、「西洋医学は病を診て治療を決める医学」みたいなことを聞いたことがあるかと思いますが、それはこういった理由からなんですね。

 今回はここまでにしましょう!また来月の配信もお楽しみに。

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