この連載記事は基本的に薬剤師あるいは薬学生向けとなりますので、専門用語を使用しております。一般の方が読まれても差し支えありませんが、専門的な表現が含まれる点についてはご了承ください。また、薬剤師の皆様におかれましては、薬学生も対象としているため、基本的な内容も含まれますことをご承知おきください。
『PICK UP the MEDICINE』の記念すべき第1回は、ロキソプロフェンナトリウム錠60mgです。ご存じのとおり、先発医薬品はロキソニン®として知られていますね。今回は、このロキソプロフェンナトリウムについて、添付文書やインタビューフォームなどの公的に公開されている基本情報をベースに、一緒に考えていきたいと思います。
ロキソプロフェンナトリウムは、1986年に三共(現:第一三共)が販売を開始した医薬品であり、その後長年にわたり、現在でも解熱鎮痛薬の分野において高い処方率を維持しています。添付文書に「特に鎮痛作用が強力である」と記載されているとおり、主に鎮痛作用を目的として使用されることが多い薬剤といえるでしょう。
まず、ロキソプロフェンという名称の由来ですが、
IUPAC名“(RS)-2-{4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl}propanoic acid”
の一部を取って命名されたといわれています。このIUPAC名からも分かるとおり、ロキソプロフェンナトリウムはNSAIDsの中でもプロピオン酸系に分類されます。
また、ロキソプロフェンナトリウムはプロドラッグとして有名ですね。添付文書やインタビューフォームには明確な代謝部位の記載はありませんが、主に肝臓で代謝を受けると考えてよさそうです。
では、その代謝酵素はCYPでしょうか?
答えはNOです。
CYPではなく、カルボニル還元酵素によって活性代謝物であるtrans-OH体へと変換されます。
経口投与されたロキソプロフェンナトリウムは、消化管吸収および活性代謝物への変換が非常に速やかで、活性代謝物であるtrans-OH体の血中濃度ピーク(Tmax)は約50分と報告されています。一方、半減期は未変化体およびtrans-OH体ともに約75分です。この「切れの良さ」が、高い処方率を誇る一因かもしれません。ロキソプロフェンナトリウムの主な排泄経路は、肝臓でのグルクロン酸抱合を経て腎排泄されるという流れです。尿中排泄の内訳をみると、排泄される成分の多くはグルクロン酸抱合体であることが分かります。
次に、薬理作用について考えていきましょう。
NSAIDsの一種であるロキソプロフェンナトリウムの薬理作用は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、アラキドン酸からのプロスタグランジン生合成を抑制することによる解熱・鎮痛・抗炎症作用です。一方、このプロスタグランジン生合成の抑制により、生理的に影響を受けやすい部位がいくつか存在し、副作用と密接に関連しています。薬剤師にとっては基本的な内容ですが、重要な点ですので、以下の3点について整理します。
まず1つ目は胃・十二指腸です。プロスタグランジンには胃酸分泌調節作用や胃腸粘膜保護作用があるため、その生合成がロキソプロフェンナトリウムによって抑制されると、胃腸障害を起こしやすくなります。
2つ目は腎機能です。腎臓におけるプロスタグランジン産生の抑制は腎血流量の低下を招きます。基本的に、腎機能の維持には腎血流量が重要であるため、NSAIDsの使用により腎機能が悪化する可能性があります。
3つ目は気管支です。アラキドン酸カスケードには、COXを介してプロスタグランジンへ変換される経路のほかに、リポキシゲナーゼを介してロイコトリエン類へ変換される経路が存在します。NSAIDsによってCOXが阻害されると、アラキドン酸はロイコトリエン類合成へと偏り、その作用が強く現れることがあります。ロイコトリエン類には気管支収縮作用があるため、これによりNSAIDsによるアスピリン喘息が成立すると考えられています。
以上、薬理作用に伴う代表的な副作用について3点整理しました。
これら以外にも副作用は起こり得ますので、各自で確認しておきましょう。
次に、用法・用量を確認します。多くの薬剤師のイメージでは、ロキソプロフェンナトリウム錠60mgは「1回1錠、1日3回、または頓服」だと思います。実は、添付文書上ではかぜの随伴症状である急性上気道炎に対しては、頓服投与のみが記載されています。あまり意識することはないかもしれませんが、知っておいてもよいポイントです。
また、添付文書の「特定の背景を有する患者に関する注意」にも留意が必要です。まず妊娠に関しては、妊娠後期は投与禁忌であり、妊娠後期以外の妊娠期間においても有益性投与となるため、本当に使用が必要かどうかを慎重に判断する必要があります(必要性は処方権を有する医師が判断することですが、実臨床においては、妊娠中の解熱・鎮痛薬として、より使用実績が豊富で安全性が高いとされるアセトアミノフェンが選択されることが多いと思います)。
さらに、小児(15歳未満)については臨床試験が実施されておらず適応外であるため、原則として使用しないと考えてよいでしょう。
加えて、先述した薬理作用からも分かるとおり、腎機能低下患者には注意が必要です。腎機能に応じた具体的な投与量は添付文書には記載されていないため、各種ガイドラインや『腎機能別薬剤投与量POCKET BOOK』などを参照するようにしてください。
以上、第一回の『PICK UP the MEDICINE』でした。次回もお楽しみに。