本連載は主に薬剤師および薬学生を対象としているため専門用語を用いていますが、一般の方が読まれても差し支えありません。また、薬学生も対象としていることから、薬剤師の先生方におかれましては基本的な内容を含む点についてご了承ください。
第2回はセレコキシブ錠です。
まず、セレコキシブを語る上で、欠かすことのできない歴史的な発見から振り返ってみましょう。セレコキシブが創薬される前年の1991年、Daniel Simmonsらによって歴史的な発表がなされました。それがCOX-2の発見です。シクロオキシゲナーゼ(COX)には、体内のほとんどの正常組織に広く存在するCOX-1と、主に炎症反応により誘導されるCOX-2(現在では一部正常組織にも恒常的に発現していることが知られています)の2種類が存在することが明らかになりました。この発見により、COX-2を選択的に阻害すれば、既存のNSAIDsと同様の消炎・鎮痛効果を有しつつ、消化管障害等の副作用が少ない薬剤が期待できます。そして、翌1992年、このCOX-2をターゲットとした分子設計に基づくドラッグデザインにより、セレコキシブの創薬が開始されました。
つまり、セレコキシブは、COX-2に対し選択性の低いNSAIDsと比べて、胃・十二指腸潰瘍などの消化管障害が少ないNSAIDsといえます。これは、NSAIDs潰瘍を防ぐうえで重要な点です。
インタビューフォームに記載されている製造販売後臨床試験の結果を一部抜粋すると、2週間投与時点での胃・十二指腸潰瘍発現率は、COX-2に対して選択性の低い非ステロイド性消炎・鎮痛剤を対照薬とした比較において、対照薬群では76例中21例に消化性潰瘍が認められたのに対し、セレコキシブ群では74例中1例と報告されています。
また、「日本消化器学会 消化性潰瘍診療ガイドライン 2020」においても、NSAIDs潰瘍発生予防にCOX-2の選択的阻害薬が有用であると明記されています。
これらを踏まえると、潰瘍リスク低下が示されており、ガイドラインでも推奨されているため、臨床の場、特に比較的長く服用することの多い整形外科領域において、選択されやすい理由の一端が見えてくるかと思います。
ただし、セレコキシブでも消化性潰瘍等の胃腸障害が起こらないわけではありませんので、服用患者に対する適切なフォローは必要です。また、第1回で触れたロキソプロフェンと同様に、腎機能やアスピリン喘息への配慮も重要です。
次に薬物動態に注目してみましょう。セレコキシブの血中濃度ピーク(Tmax)は約2.1~2.2時間、一方、半減期は約6.7~7.8時間と報告されています。
さて、ここでクイズです。セレコキシブのクリアランスは、主に肝代謝ですが、これはCYPによるものでしょうか?
答えはYESであり、主にCYP2C9を介して代謝されることがわかっています。
このCYP2C9ですが、遺伝子多型を有するCYPと知られており、この遺伝子多型によってセレコキシブの代謝速度が低下し、AUCが増加することが分かっています。具体的には、CYP2C9のヘテロ接合体(添付文書によると、日本人では4.1%存在)を有する場合には、AUCが約1.6倍、ホモ接合体の場合には約7倍程度にまで増加した例も報告されていますので、頭に入れておきましょう。
また、セレコキシブは慢性疼痛に継続使用されることが多い薬剤であることから、血中濃度を治療域で安定的に維持することが重要であり、その指標の一つとして定常状態への到達が挙げられます。セレコキシブを1日2回投与した場合、半減期から算出される理論値では定常状態到達までに2~3日程度と考えられます。一方、臨床試験に基づくインタビューフォームでは、遅くとも投与7日目までに定常状態に到達するとされています。いずれも参考として押さえておきましょう。
添付文書の「特定の背景を有する患者に関する注意」においては、前回取り扱ったロキソプロフェンと同様に、妊婦、小児、腎機能低下例等については注意が必要です。
これらに加え、セレコキシブは主として肝代謝を受けることから、肝機能障害患者においても注意が必要となります。重篤な肝機能障害を有す患者に対しては、投与禁忌であり(前回は触れていませんでしたが、ロキソプロフェンも同様です)、それ以外の肝障害がある場合には、減量するなど慎重に投与することが記載されています。薬物動態の項では、軽度肝障害患者(Child-Pugh Class A)、中等度肝障害患者(Child-Pugh Class B)において、AUCがそれぞれ、1.3倍、2.7倍に増加したことが認められていることから、これらを踏まえた投与量の設定が必要になるでしょう。
以上、第2回の『PICK UP the MEDICINE』でした。次回もお楽しみに!