Pick Up the Medicine:酸化マグネシウム

第6回の Pick Up the Medicine では、「酸化マグネシウム」を取り上げます。

本連載は主に薬剤師および薬学生向けとなりますので、ご注意ください。また、内容は添付文書やインタビューフォームを中心に、一部ガイドライン等の情報を加える程度にとどめています。ご了承ください。

さて、前回までの2回にわたって、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットという、比較的新しい便秘治療薬について取り上げてきました。

そこで今回は、少し時代をさかのぼって、古くから使用されている「酸化マグネシウム」について考えてみましょう。

ではまず、添付文書の用法・用量をみていきましょう。

便秘症に対して使用する場合、成人では通常、1日2gを食前または食後の3回に分割して投与するか、就寝前に1回投与します。ただし、適宜増減ありとされており、実際の臨床現場でも患者さんの状態によって用量にバラつきがあります。

さらに、昨今、小児に対しても適応が追加され、通常、1歳以上の小児には1日20~80mg/kgを食後の2回に分割経口投与するとされています。

では、そもそも酸化マグネシウムは、なぜ便秘に効くのでしょうか?

酸化マグネシウムは、いわゆる「浸透圧性下剤」に分類されます。

酸化マグネシウムは、胃内の胃酸によって塩化マグネシウムとなり、その後、腸内において炭酸水素マグネシウムまたは炭酸マグネシウムとなって、浸透圧により腸壁から水分を奪い、腸内容物を軟化させることで緩下作用を示します。

この薬理作用の中で注意すべき点が2点ほどあります。

まず1点目は、浸透圧性下剤をはじめとする多くの下剤は全身循環血中に吸収されて効果を発揮するわけではなく、腸管内で作用する薬剤だということ、2点目は酸化マグネシウムと胃酸との反応が薬理作用上の大きなステップになるということです。

まず1点目に関して、関係するキーワードは「高マグネシウム血症」です。

酸化マグネシウムは、全身循環血中に吸収されて効果を発揮する薬剤ではありません。ただし、服用したマグネシウムの一部は消化管から吸収され、全身循環血中へと移行します。これら吸収されたマグネシウムも含め、血清マグネシウムの恒常性には腎臓が大きな役割を担っています。

しかし、何かしらの理由により、腎機能が低下している場合には注意が必要です。腎機能低下によりマグネシウム排泄能が低下すると、高マグネシウム血症を来すリスクが高くなるとされています。特に、高齢者では、一般的に腎機能が低下していることに加え、長期服用しているケースも少なくありません。

では、腎機能が正常であれば問題ないのかというと、添付文書では「便秘症では、腎機能が正常な場合や通常用量以下の投与であっても、重篤な転帰をたどった例が報告されている」と記載されていることから、腎機能が正常であっても注意が必要です。

高マグネシウム血症は重篤な状態に至る可能性もあるため、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなどの注意が求められています。

高マグネシウム血症の初期症状は、嘔吐、徐脈、筋力低下、傾眠等であり、これらの症状があらわれた場合には、服用を中止し直ちに受診するよう指導する必要がありますが、実際、軽度では無症状のこともあるため、やはり定期的に血清マグネシウム値を測定することが大切です。

患者さんに服薬指導をする際にも、「便秘薬だから」と軽く考えず、特に長期間使用している患者さん、高齢者、腎機能が低下している患者さんでは注意が必要ということですね。

そして、2点目は酸化マグネシウムと胃酸の反応についてです。

酸化マグネシウムは、胃酸との反応を経て緩下作用のある炭酸水素マグネシウムや炭酸マグネシウムに変化します。すなわち、緩下作用を十分に発揮するためには胃酸が大きな役割を担っているのです。

つまり、この反応に影響を及ぼす薬剤、特にプロトンポンプ阻害薬やカリウムイオン競合型アシッドブロッカーなどとの併用は、酸化マグネシウムの効果を減弱させる可能性があることを頭にいれておきましょう。

また、酸化マグネシウムの有名な相互作用としてキレート形成がありますね。代表的な薬剤として、テトラサイクリン系抗生物質やニューキノロン系抗菌薬などがあります。これらの薬剤では、マグネシウムと難溶性のキレートを形成することでこれらの吸収が阻害され、効果が減弱するおそれがあります。そのため、同時に服用させず、適切な投与間隔をあけるよう指導する必要があります。

このように酸化マグネシウムは、昔から使用されている非常に身近な薬ですが、改めて添付文書を読んでみると、腎機能、高マグネシウム血症、相互作用など、薬剤師が確認すべきポイントが数多くあります。

「昔から使われている薬だから、よく知っている」そう思っている薬ほど、一度立ち止まって添付文書を読み直してみると、新しい発見があるかもしれませんね。

今回は、酸化マグネシウムについて取り上げました。

それでは、また次回。お会いしましょう!

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